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レッドオーシャンで選ばれるデザイン戦略

地方の魅力に注目が集まる風潮・トレンドに乗って、各地のお土産物は百花繚乱。追い風である半面、同じ地域の材料を用いるため、どうしても似通った商品になりがちです。徳島県鳴門市でお菓子の製造・販売を行うあずまやさんも、差別化に悩む企業のひとつでした。

瀬戸内海を挟んで本州と四国を結ぶ鳴門海峡のある徳島県鳴門市は、巨大なうず潮で知られる観光地。鳴門のうず潮は世界三大潮流のひとつで、最大の直径は30メートルほど。その迫力を体感しようと、国内外からの観光客で賑わう人気観光スポットです。

また海水のミネラルを豊富に含んだ砂地でつくられるさつまいも「鳴門金時」の産地としても有名で、鳴門のお土産物といえば、お芋のスイーツが定番。

あずまやさんの芋きんつばは、地元で採れた「鳴門金時」をはじめ厳選した素材を用い、保存料無添加でつくられるこだわりの逸品。しかし、その特徴だけでは、なかなか手に取ってもらえないことが課題でした。「あずまやの『芋きんつば』を、鳴門を代表するお土産物に!」。そんな目標を掲げて動きだしたプロジェクト。パッケージデザインをはじめ、「お客様との接点」を再構築していきました。

渦潮の町で暮らす柴犬「なるとくん」誕生!

徳島のお土産物売場は、さつまいものスイーツが所狭しと並ぶレッドオーシャン。その多くが「鳴門金時」をモチーフにした黄色や紫のパッケージをまとっています。どんなに商品特性が強くても、似通ったパッケージでは埋もれてしまうばかり。そこで思い切って、商品ではなくキャラクターがメインのパッケージに変更し、商品名も「芋きん」から「なるとのしっぽ」にリニューアル。キャラクターは「なるとくん」という尻尾をくるんと巻いた柴犬です。巻き尾を渦潮に見立て、鳴門の海を見つめる犬の後ろ姿は売場の中でもひときわ目を引く存在に。黄色と紫のパッケージが溢れる中、視認性の高い仕上がりになりました。

キャラクターは、お客様との接点から生まれる

お客様がお土産物を買うのは、主に空港やサービスエリア。観光の最後に立ち寄る場所で、徳島での体験を商品に結び付けることはできないか。キャラクターの設計は、そこを起点にはじまりました。「徳島に来たなら、きっと、渦潮を見ているはず!」。さつまいもにこだわらず、渦潮を想起させる巻き尾の柴犬を選んだのは、こうした理由から。キャラクターはインパクトがあり、効果が見込まれる一方で、間違ったブランドイメージを持たれる危険性も少なくありません。「売れそう」や「かわいい」だけでは、逆に命取りになることも。時に、商品以上に目を惹くキャラクターこそ、ターゲットを想定し、意図的・戦略的につくりあげていくべきなのです。

食べ方や商品へのこだわりは、ストーリー仕立てで

化粧箱をあけると、鳴門海峡の渦潮や芋ツルのイラストと一緒に、おすすめの食べ方や、なるとくんの家族、暮らしが見える物語が表現されています。パッケージはお客様との大切なコミュニケーションツール。一貫した世界観を構築できるよう、なるとくんのテイストに添って、素朴でほのぼのとしたイラストやフォントが選定されました。背景やストーリーまで丁寧に作り込むことにより、キャラクターに生き生きとした命が吹き込まれ、より一層、愛着を感じてもらえる存在に。世界観を通して、商品の特長や企業の思いを伝えています。

コミュニケーションが続く、深まる、Webサイト

もともと自社のWebサイトがなかったあずまやさん。商品をより広く知ってもらうため、「なるとのしっぽ」ランディングページを作成しました。サイト内には、おばあちゃんと孫の会話から「鳴門金時」のトリビアを伝えるコーナーなど、商品や原料をさらに知ってもらえる内容に。食べ終わっても、箱がなくなっても、Webサイトがお客様とのコミュニケーションを深めてくれます。また、関係構築、コミュニケーションという一次的な効果にとどまらず、B to B(対事業者)取引の信用度UPにも貢献。百貨店への催事出店の話が持ち上がるなど、二次的な効果も生み出しました。

まとめ

競合がひしめくレッドオーシャンでは、商品の特性を訴えても埋もれてしまいます。商品を売ろうとするよりも、独自の世界観を構築することが差別化への早道。ストーリーやキャラクターを創りあげ、そこに商品の魅力をのせて伝えていく――。「売るため」のストレートな戦略・戦術だけではなく、お客様の心を掴み「愛される」視点で、結びつきや愛着を醸成することが、成功の鍵と言えそうです。

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