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事例で掴むブランディング実践のヒント

良質な商品・サービスが溢れるなか、企業の販売戦略は「良質なものづくり」に留まらず、商品の良さや特長を「どう消費者に認知してもらうか」というブランド戦略・ブランディングに注目が集まっています。また一方で、ブランドというと「大手企業や限られた商材だけに効果的」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。人員や予算などリソースが限られている中小企業にこそ、ブランディングは有効な施策。

今回は、養鶏業として独自の鶏卵ブランドを確立したみずほファーム様の事例を通して、その手法をご紹介します。鶏卵の卸値は市場によって決められるため、利益率が左右される状況に危機感を抱いたみずほファーム様は、直販事業に注力することに。いいものを作って、それに見合う価格で消費者に選んでいただく。そのためにも企業ブランドの醸成、商品ブランディングが不可欠でした。

ブランドの土台づくり

ブランディングは自社と競合、顧客を分析することから始まります。PEST 分析を用いて社会情勢など、事業をとり巻く環境から影響のありそうなものをピックアップ。みずほファーム様では、地方創生や6 次産業化、健康志向の高まり、食育などのキーワードが注目すべき変化として浮上しました。次に、3C 分析で市場における自社の強み、競合との差別化ポイント、顧客ニーズを明確にしていきます。具体的にはSTP 分析で、性別や年齢などの属性、購入頻度、購入シーンによって顧客を細分化。商品が卵・鶏肉という日常的で身近な食材であることから、主なターゲットはファミリー層を想定しました。みずほファーム様のある京丹波町はベッドタウンから車で1 時間ほど。ちょっと足を伸ばして週末レジャーを楽しむ生活圏内ということもあり、直売所の立地が活きる家族構成・価値観・生活スタイル等の仮説をもとにペルソナを設定しました。

強みとなる要素は市場・競合・消費者の相関関係の中で、フレームワークを通して捉えることにより、半ば必然的に明らかになります。ここでの正確な分析がブランディングの要です。

顧客との接点を設計

ペルソナとして浮かび上がってきたのは「郊外に住むミドル~ミドルアッパー層。週末ゴルフを楽しんだ後、帰り道に直売所に立ち寄る料理好きで家族想いなお父さん」。4P 分析と4C 分析で、売る側から買う側へと視点を移し、商品と顧客ニーズをリンクさせていきます。
商品が顧客にとってどんな存在であるべきか、目指すイメージ、関係性を規定。食の安全に気を配り、多少価格が高くても良質なものを選びたい顧客に対し、みずほファームが提供できることは
・家庭料理に使われる卵・鶏肉という身近な商品
・大切な人の健康を思いやる気持ちに応える品質
・新鮮な卵を、直売所の親しみある接客を通してお届けする
家族だんらんを想起させる存在になることで、笑顔で食卓を囲む家族像にみずほファーム様の存在がリンクします。

ロゴ、ブランド名、パッケージはすべて「誰に何を届ける企業なのか」を伝える手段。デザイン単体ではなく、ブランドとしての在り方を掘り下げることにより、ブレのない表現を可能にしているのです。

ブランド価値を醸成する事業展開

ブランドが価値として認められるには、顧客との接点すべてに一貫性を持たせることが重要。ポイントは、ブランドプロミス、ブランドパーソナリティ、ブランド体験の3 点です。ブランドプロミス・ブランドパーソナリティは主に商品パッケージや店頭でのサービスに反映され、ブランド体験は顧客との関係の変化を時間軸で描いたもので、発信者側が意図的に設計するものです。

ブランドプロミスとは、企業としてお客様に提供を約束できる商品価値のこと。これは企業からの発信ではなく、その価値が顧客から信じられていることが重要です。みずほファーム様の場合、「直売所には新鮮な朝採れ卵が並んでいる」という顧客からの信頼がブランドプロミスに該当します。

ブランドパーソナリティとは、商品やサービスの提供を通じて消費者が抱く企業イメージを指し、人物像に例えて表現されるのが一般的です。みずほファーム様の場合は、地域に根差した直売所の運営、販売店での親しみやすい対応、食育への姿勢などから「ご近所の世話好きな女性像」を想定しています。

ブランド体験は、商品・サービスを知ってから実際に手にとって消費するまでの一連の行動を通して得られる情緒的価値のこと。みずほファーム様の商品を軸に描かれるブランド体験とは「美味しいね!」と家族で食卓を囲む時間や、卵を通した地産地消体験で醸成される地元 京丹波への愛着等を指します。

鶏卵販売からスタートした同社ですが、最近では「ひね鶏」を用いた商品開発も。卵を産まなくなったひね鶏を廃鶏にするのではなく、おつまみとして蘇らせるアイデアは、命を大切にいただく企業としての在り方にマッチしています。この他、卵かけごはんにぴったりのお醤油や、卵のおいしさを引き立てるカレーなども開発。ブランドに照らし合わせながら、一貫性のある商品・サービスで事業を展開。京丹波ブランドの安心・安全・食育を発信しています。

まとめ

ブランドとは、市場・消費者・競合との相関関係のなかで創られるもの。「消費者にどう認識してもらうか」という視点が不可欠です。ブランディングを通して企業としてのビジョンや理想がクリアになり、従業員のモチベーションアップにもつながることも。戦略立案やブランドデザインをつくるまでには時間やコストがかかりますが、パッケージデザインや広報活動、販売促進をそれぞれに手掛けるよりも、実はずっと効率的。中小企業にこそ、活用の意義があるといえるのです。

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