チエノワデザイン
2019年以降、おうち需要の拡大で直販事業やネット販売を始める企業様が急増しました。
一方、卸中心の事業展開では、既存得意先との関係など直販やECに参入しづらい事情をお持ちの企業様もおられるのではないでしょうか。
今回は、食品の輸入卸売業と直販事業の両立に成功された企業様をご紹介します。
当初は「卸先と競合にならないか」とお悩みでしたが、輸入卸の強みを活かした商品設計で不安を解消。オンラインショップを通じて一般消費者の心を掴み、リピーターが増えるにつれ直販事業が事業の柱に成長しています。
【前編】は、直販事業立ち上げのきっかけから、自社の強みを顧客目線の魅力に転換するブランディングまでのストーリーをご紹介。
【後編】では、売れつづけるオンラインショップに必須のファンづくり、そしてショップを長期的に育てる運用フェーズについてお伝えします。
▶【後編】卸と小売りを両立する、中小企業のためのEC成功ストーリー。
目次
アサヒグラント株式会社様は、業務用輸入食材を扱う専門商社です。
日本でいち早く生ハムを輸入するなど業界のパイオニアで、飲食店向けのチーズ、調味料などを扱っておられます。創業当時は珍しかった輸入食材も今では市場に広く浸透し、市場拡大に比例して発展されていました。
しかし、2019年以降社会情勢の変化により外食産業が低迷。
売上は昨対比30%まで減少し、余剰在庫を販売するため直販に初挑戦。クラウドファンディングや広告で当座を凌いだものの、卸依存の収益構造に強い危機感を持たれました。
そこで外部環境に左右されない売上の柱をつくりたいと、直販事業の立ち上げを検討。安売りなど短期的な施策ではなく売れ続ける仕組みをつくり、事業基盤の再構築を目指しておられました。
40年以上卸売で発展してこられたアサヒグラント様には、直販事業本格化にあたり大きな課題がありました。
「既存得意先との信頼関係の維持」です。
既存事業である卸売のお客様を大切にしながら、新規事業の直販を成長させたい。
では、卸と共存できる形で「自分たちで売るチカラ」を持つにはどうすれば良いのでしょうか?
課題を解決するヒントは「売り方」。
私たちがご提案したのは、アサヒグラント様の強み「商品力」をいかした販売戦略です。
イタリアやフランスなどの本場メーカーからプロ用の食材を直輸入するアサヒグラント様は、現地サプライヤーとの強固な関係を築き、商品力の要となる「質・量・価格」を全て備えています。
直販事業でもその強みを活かすために、オンラインショップでは卸商品を組み合わせ、セット販売を行うことに。価格内で好きな商品を選べるセットを中心に、まるで売り場でさまざまな商品を手に取り見比べているような楽しい購入体験ができる商品を企画しました。
これにより客単価の担保、そして卸価格と直販価格の共存を実現。得意先との関係を維持しながら挑戦できる環境を整えました。
「値引きや過剰な宣伝ではなく、価値で選ばれる事業に育てたい」とお考えだったアサヒグラント様。安易な値引きや広告頼りの販売戦略は一時的に売上が上がっても、激しい価格競争やコスト増につながり、盤石な事業基盤は望めません。
そのため、直販事業を媒体として市場とつながり、環境に左右されない販売力を持つ。
理想の姿を目指し、事業戦略を構築しました。
アサヒグラント様の最大の強みは商品力。生ハム以外にもチーズやワインなどさまざまな商品を販売でき、希少商品も扱えるのが専門商社ならではの利点です。この強みを顧客にとっての価値に転換し、魅力的に伝えるためのブランディングを実施しました。
幅広い商品展開、飲食店に卸す本格的な味、現地から届く珍しい食材、質・量・価格を兼ね備えた調達力。これらの特長を一言で表すキャッチコピー「おうち時間を、心と会話がはずむオトナ時間に」をブランドコンセプトに決定。
「オンラインショップで本格レストランの味を提供し、食卓に外食気分の楽しさを届ける」という消費者へのメッセージを込めています。
策定したブランドコンセプトは、事業を通して顧客に何を提供するのかを明確にし、企業と顧客を繋ぐ架け橋となります。
卸依存の体制から脱却し、小売りとの両立を目指すべくECに参入されたアサヒグラント様。
しかし初めての直販事業には「既存得意先との関係維持」や「消費者に自社の魅力が伝わるブランド構築」、「ファンを作り、長く愛されるための施策」など、多くの課題がありました。
そこで当社では「商品力を活かした販売戦略」、「自社の強みを顧客目線の価値へ転換するブランディング」をご提案。
未来のファンにアサヒグラント様の魅力を知ってもらう準備が整い、オンラインショップ開店へ順調なスタートを切ることができました。
【後編】はいよいよ具体化フェーズ。
サイトデザインや購買意欲を搔き立てる商品画像、データ分析や継続的な運用など、新規事業を大きく育てていくヒントをお伝えします。